「・・・おい、慎也。見たか・・・今の」
「アイツの・・・手が、触れたようだけど?」
「・・・後ろ向きで触れただけで、なぜ倒せる?」
「さあ・・・調べてみようか?」
「・・・ああ」
――タタタッ・・・
「お〜い、大丈夫?」
「・・・う・・・ぐ」
「返事は・・・できないようだな」
「あ!正弘・・・ここ見て」
「・・・なんだこりゃ、陥没してるぞ?」
「なあ・・・涼一君!」
「・・・?」
「君は一体・・・何をしたんだ?」
「別に・・・手で押しただけだ」
「・・・そうか、おい!だれか医務室に運んでやって」
「は・・・はい!」
――ドタドタドタ・・・
「・・・さてと」
「慎也・・・どうするんだ?」
「そうだね・・・まだまだ謎だらけだし、涼一君!キミはどうする?」
「・・・終わりなら帰るさ」
「いや・・・お楽しみはこれからさ、おい!君・・・たしか、初段だったね。相手して」
「え・・・あ、はい」
「・・・・・」
――バタッ
「な・・・じゃあ、君二段だろ?行け」
――バタッ
「じゃあ・・・もう、君」
――バタッ
「・・・浅田君って強かったんだ」
「ほんとですね・・・」
「アイツねー、ケンカで負けたことないのよ。
ほら・・・あんな感じだからよく目を付けられるけど、ぜ〜んぶ返り討ちにしたのよ」
「どうして・・・あんなに強いんですか?」
「それがねー・・・あたしにもわかんないのよ。気づいた時から、なんでも出来たから。涼一は」
「・・・・・」
「あーもう!次は・・・」
「もういいだろ?」
「・・・正弘」
「浅田、次は俺が相手だ・・・」
「・・・・・」
「慎也・・・上着と・・これ持っててくれ」
「・・・ああ、気を抜くなよ。アイツは・・・強い」
「わかってる」
(本気だな・・・十キロあるパワーリストを外すなんて)
「・・・いくぜ」
「・・・・・」
――シュバ!!
「・・・!」
「ふっ・・・どうだ」
(この前と速さが違うな・・・)
「村上さんの本気の蹴りだ!」
「・・・すげえ!全然見えねえ!」
――シュバッ!・・シュバッ!・・・
「どうだ!避けるだけで精一杯か!」
「・・・鬱陶しいな」
――ガシッ!
「・・・な!」
「・・・・・」
俺は村上の右足を掴んだ。
「くそ!・・・離せ・・う・・ぐあああぁぁ!!」
――・・メキ・・メキメキ
徐々に握力に力を入れていく。骨がだんだん軋んでくる。
「くっ!・・・貴様ァ!」
――シャアッ!
右足を掴まれたまま、左足で蹴ってきた。
――ガシッ!
「う・・・!」
「・・・飛べ」
――ブウンッ!!
村上の両足を掴み、そのまま壁の方へ放り投げた。
「うあぁーーっ!!」
――ドンッ!
壁に当たって、動かなくなった。
「おい!正弘!」
「村上さん!」
――ググ・・
(・・・立ち上がる気か?・・・見上げた根性だな)
「待てよ・・・まだ終わっちゃいねえ・・・」
「・・・・・」
「いくぞ・・・!」
――シュッ・・・
もうスピードもキレもない。
「どうして・・・あそこまでやるんでしょうか?」
「・・・そうね」
「男って・・・バカだから・・・」
――グッ
「正弘・・・!もういい・・・やめるんだ!」
「くそおぉーーっ!!」
「・・・寝ろ」
俺は懐に入り、掌打を放った。
――ッ!
そのまま、音もなく吹っ飛んだ。
「正弘・・・正弘!しっかりしろ!」
「へへ・・やられちまった」
「・・・後は僕に任せろ」
「おまえ・・・!?」
「こんどは瑞樹か・・・」
「ああ・・・こうみえても僕は、ここの師範代だからね」
「・・・・・」
「こんどは・・・彼なの?強いのかしら・・・」
「お兄ちゃんは負けません!」
「え?なに」
「お兄ちゃんは絶対・・・」
「・・・でも、見ての通り。涼一もかなり強いよ」
「そしたら・・・あたしは・・・あたしは・・・」
――ダッ!
「あ・・・ちょっとアナタ・・・」
「練習はサボってたけどね・・・体は覚えているハズだよ」
「・・・そうか」
「正弘・・・合図たのむ」
「ぐ・・・ふっ・・・開始!」
「てい!」
――ビュウッ!
(随分延びのある突きだな・・・)
「ヒュウウウゥ・・・」
そのまま回るように拳撃が続く。
「ハァアアアアーー!!」
――ビシビシビシビシビシッ!!
(・・・ほう)
連続した拳がマシンガンのように降り注ぐ・・・だが。
「何・・・!」
俺はそれらをすべて片手で防いだ。
「くっ・・・だめか」
瑞樹は急いで間合いを取ろうとする。
――・・・ヒュッ
「・・・!」
「・・・・・」
俺の素早い踏み込みで間合いはあっという間に縮んだ。
――ガスッ
「か・・・!」
手刀が首筋に決まった、しばらくは動けないだろう。
「さてと・・・終わったようだな」
そうして、帰ろうとした時だった。
「・・・待ってください!」
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