放課後、帰ろうとした時だった。
「あの・・・浅田君、良かったら・・・」
『はあ〜い!涼一君、こんにちは』
見ると、ドアから瑞樹が入ってきた。
(しかも・・・村上ってヤツも・・・?)
「やっ、今帰り?昨日はどーも」
「よ、浅田」
二人は俺に近寄ってきた。
「瑞樹に村上・・・おまえら、知り合いだったのか?」
「ま〜ね、なんという偶然なんだろう。な?正弘」
「ああ・・・まったくだ」
「・・・・・」
「良かったらさあ・・・僕たちと来てほしいんだよ、紹介したい人がいるんだ」
「・・・いや・・・しかし」
「ねえ・・・行ってあげたら?」
すると、高宮が入ってきた。
「え?」
「・・・こういうのって大事よ、もっと人と仲良くしなきゃ」
「そう!キミ良いこと言うねぇ〜、涼一君どうだい?」
「・・・わかったよ」
「よしっ!話しは決まった。じゃあ着いて来てよ、その人待たせてるから」
「・・・・・」
「だいじょーぶ、可愛い子だから・・・ほら正弘、行くぞ」
「・・・ああ」
そうして俺達は教室を出た。
(ああいう人が友達になれたら・・・浅田君も少しは・・・)
「さてと・・・あたしも帰ろう」
あたしは鞄を持って教室を出た。
「あれ?」
「あ・・・どうも」
教室から出た少し辺りで、北村さんを見かけた。
「あの・・・涼一さんは?」
「浅田君?彼なら他の人と帰ったわよ」
「そうですか・・・」
「残念ね、あたしも一緒に帰りたかったんだけどね」
「あっ・・・」
「ふふっ・・・お互い独りぼっちだし、どうせだから一緒に帰りましょうか?」
「そうですね・・・あ、でしたら恵美さんも誘いませんか?」
「そうね・・・じゃあ、教室に行きましょうか」
「はい」
あたし達は恵美の教室に足を向けた。
―――校門
「あ・・・いたいた」
「お兄ちゃ〜ん!こっちこっち」
「ほらっ、涼一君だよ」
「あ・・・始めまして、慎也お兄ちゃんの妹の「瑞樹 可奈」です!」
「・・・妹?」
「そう。何を隠そう・・・彼女は、僕の父親の再婚相手の連れ子で血のつながらない妹なんだ」
「おい・・・慎也」
「お兄ちゃん!ウソ言わないでよ!信じちゃったらどーすんの!」
「はははジョーダンだよ・・・それじゃ、僕の家に行こうか」
「え!家に招待するの?」
「ああ・・・いいだろ?涼一君」
「・・・別にかまわないが」
「やった〜!」
「あ・・・そうだ、家に連絡するから。可奈、先に行っててくれ」
「は〜い」
「じゃあ行くか。浅田、こっちだ」
「・・・・・」
「もしもし?・・・そうか・・・全員集まった。
じゃあ・・・みんなは体をほぐしておいて。三十分くらいで着くから」
――プツッ・・・
「さてと・・・お〜い、待ってくれよ〜」
―――学校内
「へ〜、涼一が・・・」
「そうなの、だからね・・・そっちの方が大事だと思って」
「高宮さん・・・って偉いですね」
「いえ・・・それに、瑞樹って人・・・ほら昨日のゲームセンターの」
「ああ!あの軽薄そうな男」
「ああいう人が一緒にいれば、彼も・・・・・・あ!」
「どうしたんですか?」
「さっき・・・教室にいたあの人・・・屋上の不良だ!」
「え?・・どういうこと」
「あのね、この間浅田君に会いに屋上に行ったの。そしたら・・・屋上が閉まってたの」
「それで?」
「そこにいた人に聞いたら・・・不良が来て、屋上にいた人を締め出したんですって」
「で・・・どうなったんですか?」
「あたし、扉を開けたら屋上の向こうで・・・教室にいた村上って人と、浅田君が対峙してて」
「それでどうなったの?」
「そしたら、すぐに扉をしめられてそれきり・・・」
「・・・・・」
「しばらくしたら不良達が出てきたの・・・
それで、急いで浅田君の所に言って聞いたら。別になんでもないって・・・」
「本当ですか?」
「ええ」
「・・・アイツがなんでもないって言っても、周りからみればそうでないことがあるのよね〜」
「・・・・・」
「・・・・・」
「ねえ、涼一が呼ばれたのっていつ?」
「え?ついさっき・・・数分前」
「そう・・・よし!追いかけるわよ!」
「えっ!」
「・・・でも」
「ほら!ぐずぐずしない、急がないと見失っちゃうわよ」
「あ・・・ちょっと」
「ま・・待ってください!」
――タッタッタッタ・・・・・
「浅田先輩って、趣味はなんですか〜」
「・・・・・」
「可奈、彼はね生半可なことじゃ口を開かないよ〜。なんてったって筋金入りのクールだから」
「へ〜、噂は本当だったんだ〜」
「・・・・・」
「まあ・・・可奈みたいなお子ちゃまには、百年かかっても落とせないね〜」
「ぶ〜っ。ひど〜い、お兄ちゃんったら。
いいもん可奈、お兄ちゃんの恥ずかしい話しをクラスのみんなに話しちゃうんだから」
「え〜、ちょっと待ってよ。それとこれとは話しがちがうだろ〜」
「い〜だ、お兄ちゃんなんてキライだもん」
「そんなあ・・・この頃、女の子達からの好感度が下がって・・・その上妹にまで見放されるなんてぇ〜」
「ナンパなお兄ちゃんがいけないんですよ〜だ」
――キャッキャ・・キャッキャ・・
「なあ・・・村上」
「ん?」
「・・・おまえら何を企んでる?」
「はっ・・・気づいてたか」
「まあな・・・」
「それなら、なぜ付いて来た?」
「・・・退屈しのぎ・・かな」
「ほう・・そうか、ならとっておきの退屈しのぎを用意してある。楽しみにしてろ・・・」
「・・・・・」
「はあはあ・・・待って・・よ・・・恵美」
「そう・・ですよ・・・速すぎます・・・」
「ちょっと〜、アンタ達。日ごろ運動してないわね〜、このくらいでバテるなんて」
「陸上部の・・・エースと・・・一緒にしないでよ・・」
「はあはあ・・・そう・・・です・・・」
「・・・まあ、とにかく。やっと発見したんだから、後は気づかれないように尾行よ」
「はあはあ・・・うん・・・」
「・・・はい」
「・・・ここが僕達の家」
「ここが?」
「はい、そうです」
「・・・・・」
そこはかなり広い道場といったものだった。
「知らないのか?瑞樹道場ってたら・・・結構この辺で有名だぞ、俺もここで習ってるんだ」
「・・・・・」
「じゃあ・・・家の方へ」
「待った、可奈」
「え?何、お兄ちゃん」
「彼に、道場の中を見せてあげたいんだ」
「・・・・・」
「でも・・・」
「な?いいだろ、涼一君」
「・・・なるほどな」
「?」
「良いってよ、さ・・・行こーぜ」
そう言って、村上が俺の背中を押す。
――ギイィッ・・・
大きな木の門を開け、中庭を通る。
「あ・・・待ってよ!お兄ちゃん」
俺は道場へと向かわされた。
「あの・・・ここに入って行きましたよ」
「・・・瑞樹道場?」
「ここって・・・」
「美紀、知ってる?」
「うん・・・門下生が百人くらいいて、この辺じゃ・・・結構名が知られているって所だけど・・・」
「そんな所に・・・なんで涼一が?」
「そういえば・・・さっき涼一さんを連れていった人も瑞樹って名前でしたね」
「・・・・・」
「どうする?」
「どうするって・・・別に中でケンカするって決まった訳でもないし・・・」
「でも・・・」
「・・・心配です」
「そうねえ・・・たぶんアイツなら大丈夫だと思うけど・・・なんなら、どっかから覗いてみる?」
「え?」
「それは・・・ちょっと」
「だいじょーぶだって、ほら・・・あの辺から」
「あ・・・恵美」
「恵美さん、あの・・・」
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