「おはよー」
「・・・ねえ、昨日のアレ見たー！」
学校に着いた。俺はいつもと同じように教室に行き、自分の席に座る。
「あっ・・・浅田君、おはよう」
「・・・・・」
さっそく高宮が話し掛けてきた。
「お弁当・・・作ってきたけど、どう？」
「・・・人の少ない所ならな」
「ほんと！じゃあ、どこにする」
「そうだな・・・中庭かな」
「うん！わかった」
（・・・なんで、こんなことで喜ぶんだ？）
――昼休み
俺達は浅田を探していた。
「お・・・いたよ、ははあ〜ん・・・女の子とお弁当か・・・いいねえ」
浅田は女子と中庭にいた。
「で・・どうする、ここでじっと見ているか？」
「そうだね・・・しばらく様子見ようよ、あせって逃げられてもしょうがないし」
「なんか・・・俺達ストーカーみたいだな」
「違う違う、た・ん・て・い・・・僕達はある重要な人物を追う、国家の任を受けたエキスパートだよ」
「はいはい・・・」
という訳で、俺達は一年生の教室前の廊下で見張ることにした。
――・・・カチャ
俺は弁当を食べ終え、箸を置いた。
「なあ・・・一つ聞いていいか？」
「え、何？」
「どうして、こんなことをするんだ」
「こんなこと・・・って、どういうこと？」
「弁当を作ってきたり・・・わざわざ帰りを待っててくれたり・・・」
「うーん・・・浅田君と・・・お友達になりたいからかな？」
「友達？」
「うん」
「・・・だが、他にも人はいるだろう？別に俺でなくても」
「ううん・・・違うの、浅田君じゃなきゃ・・・」
「？」
「知ってる？浅田君って・・・女の子に人気あるんだよ」
「聞いた・・・だが、なぜだ？」
「なぜ・・って、そうねえ・・・浅田君カッコイイし」
「かっこいい？・・・俺が？」
「そう、その顔立ちが・・・女の子を惹き付けるの」
「顔・・・ねえ」
「それにね、浅田君って結構クールじゃない。その辺がいいんじゃないかな」
「・・・君もか？」
「え？」
「君も・・・そういう奴等の一人か？」
「あたしは・・・うん・・・正直に言うと、最初はそうだった」
「・・・・・」
「でもね・・・何回か会って、浅田君と話すうちに・・・そういうのとは違う、何かに気づいたの」
「何か・・って？」
「それは・・・言葉じゃ良く伝えられないけど・・・でも、浅田君と一緒にいたいって気持ちはあるの」
「・・・俺には解らないな」
「どうして？」
「他人とは・・・今まで避けて生きてきた、人と一緒にいる理由がない」
「理由って・・・そんな」
「一人でやれるなら、それでいいと思った・・・」
「浅田君って・・・友達は」
「いや・・・別に」
「恵美は？」
「あいつは・・・妹みたいなものだ」
「そう・・・」
「・・・・・」
「浅田君・・・寂しくないの？」
「・・・自分が決めたことだ」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・あいつら、何話してんだろ〜」
「気になるか？」
「別に！他人の恋路を邪魔する気は無いからね」
「・・・いつまでも、こうしちゃいられないんじゃないのか？」
「う〜ん、僕もそう思ってた」
「あいつと接触しなきゃいけないだろ？」
「・・・それを考えてるんだ、ただ目の前に行って・・・よお！元気？・・・とか言ってもなあ」
「ケンカでも吹っ掛けるか？」
「・・・そいつはこの間、正弘がやったんだろ？それじゃ・・・アイツは乗らないだろう」
「うーむ、奴の実力を知るには・・・そうだ！道場におびき寄せるのはどうだ？」
「うちのか？どうやって？」
「そうだな・・・」
――トタトタトタ・・・
「ねえ・・・お兄ちゃん何してんの？」
「え・・・可奈じゃないか？どうしてここに」
「どうしてって・・・ここ、あたしの教室の目の前だよ」
「・・・あ」
「なるほど・・・」
「あ、正弘さん。こんにちは」
「よお」
「・・・・可奈！・・・アイツ知ってるか？」
「え・・・あの人、浅田先輩じゃない！」
「そうか・・・知ってたか・・・」
「うん！うちクラスの子も、何人か浅田先輩のこと知ってるよ」
「・・・ちなみにお兄ちゃんのことは？」
「ぜ〜んぜん」
「がくっ・・・」
「おい慎也・・・どうしたんだ」
「あ、正弘・・・ちょっと耳貸せ」
「え？」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「ちょっとー、お兄ちゃん達どうしたの？」
「・・・な？」
「なるほど・・・」
「ねえ・・ったら」
「なあ可奈・・・アイツとお近付きになりたいか？」
「え？浅田先輩と！うんっ！なりたいなりたい！」
「そ〜かそ〜か・・・」
「ねえお兄ちゃん、浅田先輩とお友達なの？」
「まあ・・・そうかな、なあ正弘？」
「・・・ああ」
「へぇ〜・・・」
「可奈、お兄ちゃんが可奈のこと紹介してやるよ」
「本当！やったぁ〜！」
「・・・正弘・・・なんか素直に喜べないんだけど」
「まあ・・・気にするな」
「お兄ちゃん？なんか言った」
「ん・・・いや、べっつに〜」
「・・・・・」
「ん？もうこんな時間だ、この話しは放課後にな？じやあな」
「あ・・・お兄ちゃん、ほんとだよね！」
「ああ！帰りに校門で待ってろ、迎えにいってやるから」
「うん！」
そう言って僕たちは、一年生の教室前を後にした。
「・・・慎也」
「ん？」
「上手く行くのか？」
「・・・まあ、見てなさいって」
僕たちはそれぞれ教室に戻った。
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