「あら・・・?」
部室からスケジュール表を取りに行った帰りに、見覚えのある奴を見かけた。
(・・・涼一じゃないの)
あいつは木陰で寝っ転がっている、あたしは近づいた。
「何してんの、アンタ」
「今度は・・・恵美か・・・」
すると涼一は、めんどくさそうにこっちを見た。
「今度は・・・ってどーゆーイミよ。それよりどうしたのよ、こんな所で」
「別に・・・昼飯食ってただけだ」
「・・・ふーん」
あたしは涼一の隣りに座った。
「おまえこそ・・・なんでこんな所に?」
「あたし?あたしは部室に用があってね、そしたら帰りにアンタを見っけたわけ」
「なるほど・・・」
――カサカサカサ・・・
・・・風で葉っぱが揺れる。空が晴れてて心地よい天気だ。
「聞いたわよ〜、アンタ近頃モテてるらしいじゃない?」
「まあ・・・確かに変な奴等には付きまとわれるな・・・」
「へえ、どんな?」
「女連れのおかしな奴とか・・・変な不良とか・・・わざわざ弁当を作ってくる女とか・・・」
「・・・ちょっと待ってよ!弁当!?それ本当?」
「ああ」
「ウソ・・・それっていつから?」
「昨日」
「へぇ〜・・・あれ?じゃあ今日は?」
「無視した」
「えっ!なんで?」
「いつもは屋上に行くんだが・・・この頃なぜか人が多くて、俺は騒々しい所は嫌いだからな」
「・・・・・」
「だから・・・誰にも会わないようさっさと教室を出た」
「・・・はぁ〜あ、なんでかね〜」
「・・・?」
「なんでこんな人付き合いの悪い奴がモテるのかね〜」
「・・・知るか」
(まあ・・・たしかにカッコイイけど・・・)
「涼一さあ・・・覚えてる?中学の時」
「・・・・・」
「バレンタインの時に・・・アンタ何個かもらったよね、チョコ」
「・・・ああ」
「そしたら家であたしに向かって、ポリポリ食べながら言ったじゃない。「食うか?」・・・って」
「・・・・・」
「普通、貰ったバレンタインチョコを他人にあげないわよ?・・・しかも女の子に」
「・・・でも、おまえ食ったろ?」
「ま〜ね、美味しかったし」
「・・・・・」
「とにかく、せっかくモテてるのにさあ・・・そんなに冷たくしていいわけ?もったいないと思わないの?」
「・・・別に」
「アンタさあ・・・女の子に興味ないの?年頃の男の子のくせに」
「おまえには関係無いだろ・・・」
(・・・関係ないわけ・・・無いじゃない)
「・・・ま。女の子というより、他人とあんまり話したがらないよね〜。涼一は」
「・・・・・」
「この学校で・・・アンタとまともに会話してるのって、あたしくらいじゃない」
「・・・まあな」
「付き合い長いもんね〜、かれこれ十年くらいになるんじゃない?」
「ああ・・・そうだな」
「しかも一緒に住んでて・・・こんなこと、うちの女の子たちに言ったら大騒ぎよ」
「・・・・・」
「あたし達って・・・なんなのかなあ、家族?幼なじみ?それとも・・・」
「・・・兄妹みたいなもんだろ」
「あ・・・そーいやそうね、オ・ニ・イ・チャン」
「気持ち悪いからやめろ・・・馬鹿妹」
「はいはい、すいませんね」
「・・・・・」
(・・・やっばりね)
「さて・・と、そろそろ行くわ」
「ん・・・そうか、じゃあ俺も」
あたし達はそろって立ち上がった。
「・・・あ、そうだ。たまには一緒に帰らない?」
「いいけど・・・おまえ部活は?」
「テスト前だからお休み〜」
「・・・なるほど」
「じゃ!校門でね」
そう言って、あたしは涼一と別れた。
(妹・・・か)
少し走り気味に校舎に戻った。
教室に戻ると、隣りの席にはすでに高宮が戻っていた。
「・・・ねえ」
何か言おうとしたが。
「・・・・・」
結局何もしゃべらなかった。
(・・・なんだ一体?)
――キーン・・コーン
俺は席に着いた。
「はい・・・じゃあ91ページの・・・」
教師が授業を始めた。
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